第12章 進物 後編【冨岡義勇】
天元の目にも、陽華の全ての動きを捕らえる事が出来なかった。
「たくっ…、何なんだ今の技は……、」
※説明しよう!!
【超神速・霹靂一閃】とは、陽華が善逸との合同任務の際、たまたま見た善逸の霹靂一閃の連撃を…、
「えーー!なにそれ、私もやってみたーい!」と、それを見様見真似で習得したものに、さらにアレンジを加えたものである。
連撃毎に蹴る力を強め、加速度を増していき、その勢いは最終八連撃目で最高速度に達する。そしてその勢いまま、霹靂一閃の究極技【神速】を繰り出すことで、【神速】を上回る超速度【超神速】を実現した技である。
一度の負荷で繰り出す【神速】よりも段階を踏む為、脚への負担がより少なくなる特性も備えている。
しかし、発現には条件があり、それなりの広い空間と、何度も力強く蹴り上げる事が出来る壁のような物がある場所でしか使用出来ず、陽華自身も今回初めて使用した。
そして、陽華が使いたくなかったわけは、アレンジを加えたと言っても、元が弟弟子の善逸の技をパクった物なので、自尊心が少しだけ、許さなかったのだ。
「義勇さんっ!?」
陽華は義勇のもとに走り寄ると、先に様子を見てくれていたしのぶに問いかける。
「しのぶちゃん、義勇さんは!?」
「大丈夫ですよ。少し強く壁に打ち付けたせいで、脳震盪を起こしただけのようです。すぐに目を覚ましますよ。」
「よかったっ!!」
陽華が安堵の表情を浮かべると、しのぶもそれに笑顔で返し、そして心の中で付け加えた。
(…それにあの鉄球は、芯には重さを持たせる為に本物の鉄球を使ってますが、周りはハギレや綿で覆われているので、勢いや衝撃は強いですけど、打撃はそんなにないんですよね。柱なら、充分耐えられます。)
二人が安心して笑い合っているうちに、天元は虚無僧の身体を物陰まで引き摺って隠すと、再び陽華に驚きの視線を向けた。
初めて見たかもしれない、陽華の本気。
「……アイツ、実は最強なんじゃねーか?」