第12章 進物 後編【冨岡義勇】
四人が四方から、攻撃の機会を伺うように動き出すと、虚無僧は鎖の中心を持ち、両方の鉄球を縦横無尽に激しく振り回し始めた。
陽華は向かってくる鉄球を避けながら、隙を狙って斬り込んでいく。しかし、すぐに軌道を変えた鉄球で目の前が塞がれる。
だがどの攻撃も、面白いくらいに当たってこない。
(さっきの攻撃もだけど…、やっぱりあの鬼、本気を出してない?)
さっきの攻撃、陽華と義勇の二人を捕まえたなら、如何様にでもとどめを刺せたはずなのだ。
しかし、虚無僧は二人を弾き飛ばしただけだった。どういうつもりなのかは、わからない。でも……、
(あの鬼が、本当は戦いたくないと思ってるなら…、それなら……、)
陽華は意を決すると、虚無僧に向かい走り出した。
一方天元は、斬り込む風を装いながら、飛んでくる鉄球を適当に回避しながら、これからの作戦を練っていた。
(冨岡も一回助けに入ったし、抱っこまでしてもらってたからな。もう結構ビリビリと来たんじゃねーかな?)
耀哉曰く、作戦名のビリビリとは、戦闘中に感じる高揚感や緊張感を二人で味わうことによって生じる、電流にも似た刺激。それを恋愛感情として……、って、長ったらしいことを言ってた気がするが、半分も覚えていない。
(要するに吊り橋効果みたいなもんだろ?……それならもう充分だろ。)
チラッと虚無僧を見る。
(そろそろ、悲鳴縞の旦那には死んでもらって、こんな茶番はお開きに……、)
そう思って、虚無僧に合図を送ろうとする天元。しかしその間を割って入ってくる人影が一つ。
(陽華!?…なんだ、アイツ?)