第12章 進物 後編【冨岡義勇】
二人の間、虚無僧の真正面に立った陽華は虚無僧に向かって叫んだ。
「虚無僧さん、聞いてください!!貴方、本当は戦いたくないんじゃないですか!?」
突然、問いかけを始めた陽華に、天元の顔が、明らかに面倒くさそうに引き攣る。
(うわっ、対話が始まった。めんどくせーー!)
そんな天元の想いをよそに、陽華は虚無僧に少しずつ詰め寄ると、さらに悲痛な面持ちで熱く問いかける。
「さっきから、私達が大きな傷を追わないようにって、手加減してますよね?」
話をしながら、鬼に近づいていく陽華に、流石の義勇も止めに入る。
「陽華、いい加減にしろ!鬼に問答など無用だ。」
「待ってください、義勇さん!…私、やっぱり信じられないんです。あの時…無一郎くんに向けた優しさ、あれはやっぱり下心があったようには見えないんです!」
迷子になっていた無一郎に声を掛け、励ましにお茶をご馳走するなど、もう普通の気のいいおっちゃんじゃないか?
陽華は虚無僧に向き直ると、曇りなき眼でその姿を見つめる。
「虚無僧さん、貴方は本当は優しい人のはずです!戦いたくないと言うのなら、悪いようにはしません!だからっ…だからっ!!大人しく、その頸を差し出してくださいっ!」
・・・・・・・・?
その瞬間、大人しく陽華の演説を聞いていた天元としのぶの目が点になる。
「………アイツ今さらっと、えげつねーこと言わなかったか?」
「いいましたね。」
苦笑いで返すしのぶ。
その一瞬後……、
ドォォォォンッ!
突然虚無僧から放たれた、先程とは比べ物にならない闘気。
それを体全体で感じた陽華が、悲しみに顔を曇らせる。
「なぜっ!!虚無僧さん、どうしてですか!?」
「……いや、あれは普通にキレんだろ?」
思わず、天元が突っ込む。