第12章 進物 後編【冨岡義勇】
さらにもう片方の手で陽華の身体ごとグルンっと鎖を捻ると、義勇の刀さえも絡め取り、そのまま二人は力任せに持ち上げられると、ハンマー投げのようにブォンブォンと回されて、明後日の方向に投げられた。
「きゃーーー!!」
「くっ!!」
天井まで飛ばされた義勇は、空中でくるっと体制を変えると、天井を蹴って、後から飛んできた陽華の身体を受け止めた。
「大丈夫か?」
「ぎ、義勇さん、ありがとうございます!(やだっ、義勇さんに抱き抱えられちゃったっ!!)」
お姫様抱っこみたいに抱えられ、そのまま優しく地上に降ろされる。すると、そんな場合ではないのに、陽華は心臓が激しく高鳴るのを感じた。
「おーい、お前ら怪我はないかー?」
修学旅行に引率する先生の、生徒の安否確認のごとく、天元としのぶが近づきながら問いかける。義勇は陽華の身体を降ろしながら、
「問題ない。」
と涼しい顔で答えた。
今しがた、かなり無様に投げ飛ばされたくせに、何を涼しい顔をしてやがる。…と天元が突っ込みそうになるが飲み込む。
それよりも、隣で顔を高揚させて俯く陽華が気になり、顔を軽く覗き込む。
「どした?どっか、痛いのか?」
「い、いいえ!私も問題ないです!……それよりっ!!私、今のでわかっちゃいました!!」
鼻息を荒く意気込む陽華に、天元は首を傾げる。
「あ?何をだ?」
「あの鬼、間合いに入っても、めちゃ強です!!」
「…そ、そうか。」
天元が呆れた顔で、返事を返した。
「……でも、やっぱりあの鬼、」
陽華は何か心に引っかかるものを感じて、チラッと虚無僧を見る。
「陽華さん、どうかしましたか?」
「ううん、なんでもない!!」
陽華のどうもはっきりしない態度に、しのぶも首を傾げる。しかしすぐに気持ちを切り替えると全員の顔を見た。
「やはり、当初の予定通り、四人で撹乱して、相手の隙を誘って行くほうが得策ですね?」
しのぶの意見に他三人は頷くと、各自、虚無僧を囲うように動き出した。