第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「冨岡、お前さ、このまんまでいいの?」
「……?」
「アイツはまだガキだが、女ってのは早熟だ。すぐに大人になっちまう。そうしたら、他の男が放っておかねーって言ってんだよ。」
天元が助言するよう言うと、義勇はサッと瞳を軽く伏せ、戦闘に戻るべく、天元に背中を向けた。
「おい、冨お……、」
「そんなことは、お前に言われなくてもわかっている。」
静かに言い放つと、もうこれ以上話すことはないとばかり、歩き出す。
その後ろ姿を見て、天元は日輪刀を掴んだ手をぷるぷると震わせた。
「あ〜もう!!本当に辛気くせー奴だなっ!!」
軽く悪態を付くと、自分も皆が怪我しないようにと見張るべく、戦闘の輪の中に戻った。
そして、二人が戻ってきたのを見計らうように、呼吸を整えた陽華が戦闘再開の口火を切る。
雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃
ドォンッ!
激しい雷鳴を轟かせ、陽華の身体が虚無僧に向かって飛び出す。
途中、鉄球が掠めるが、身体をひねってかわすと、飛び出したと同時に抜いた刀を、虚無僧の首めがけて振り抜く。
(近づけた?)
一瞬思うが、辺りに響いたのは肉と骨を絶つ音ではなく…、
ガチャンッ!!
激しい金属音。攻撃は虚無僧の両手に橋渡しに張られた鎖に絡め取られ、止められる。
恐らく陽華の攻撃など、初めから問題ではないとわかっていたから、近づけたのだろう。
(やっぱり…真正面から正々堂々は、流石に無理か。)
陽華は絡め取られた刀を引き抜こうと力を込める。……だが、虚無僧の方が一枚も二枚も上手だ。
「な、なにっ!!」
グルンっと手を返し、反対にさらに刀を絡め取られて、身動きを封じられる。
「陽華っ!」
その隙に近づいた義勇が、陽華を助けんと、虚無僧に向かって技を放つ。
水の呼吸 肆ノ型 打ち潮
義勇から放たれた、荒ぶる水飛沫。それが虚無僧を飲み込まんと襲う。
しかし虚無僧は、さらに鎖を間隔長く取ると、陽華の刀を絡め取ったまま、義勇の刀を受け止めた。
「何!?」