第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「陽華…お前っ…、」
義勇は顔を軽く高揚させると、見てはいけないと顔を背けた。
「ごめんなさい、はしたないと思うでしょうけど、今は見逃してくださいっ!」
そういった陽華の腰から下は、着物の下着とも言える薄手の白い襦袢が顕わになっていた。
年頃の乙女としては、これは最高に恥ずかしいが、これで格段に動きやすくなったのは間違いなかった。
「陽華さん、これも……、」
しのぶが近寄ってきて、白い襷を渡してくる。
「しのぶちゃん、ありがとう!!」
陽華は渡された襷の端を咥えると、素早く袖を巻き込んで固定し、脇の部分できつく結んだ。
これで準備は整った。後はあの鬼の頸を吹き飛ばすのみ。
しかし、陽華はあの鬼に小さな違和感を感じていた。
先程の鉄球、陽華に直撃する寸前、明らかに威力が軽減されてた。目に見えて速度が変わったのだ。
(もしかしたら…あの虚無僧さん、戦いたくないのかも……、)
炭治郎の妹、禰豆子のような前例もある。争い合いたくない敵だって……、
(ううん!!)
陽華は勢いよく首を振った。
もうすでに犠牲者が出てることで、答えは出ている。「人を喰う鬼に情けは不要!」初めて義勇と合同任務に出た時に教えられたことだ。
(そうだ、私は鬼狩り。人を喰う鬼はけして容赦しないっ!!)
陽華はまたご丁寧に待っててくれた虚無僧の真正面に立った。
そして足を大きく開き、刀を構え、静かに呼吸を整える。
「アイツ、脚も中々良い形してんじゃんか?ケツも安産型だし……、」
陽華が大きく足を開いたせいで、白い襦袢からチラ見えする、形の良い太腿を見て天元が呟く。
すると次の瞬間、鋭い刃先が天元の喉元寸前でキラリと光った。
「これ以上、卑猥な言葉を発すれば、貴様の頸もここで斬り落とす。」
いつも以上に冷たい視線、凄みの聞いた声色で義勇が囁く。
「おーい、剣先向ける相手間違ってんぞ?…冗談だよ。」
義勇の本気の圧に、天元は苦笑いを浮かべると、喉元の剣先を摘んで下に降ろした。