第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「たくっ…、お館様の考える事と言ったら、常軌を逸してるぜ。」
思わず声に出して呟くと、
「こらこらっ!心の声が表に出ちゃってますよ?」
隣のしのぶに小さく窘められる。天元は「いけねっ。」と慌てて刀を構えた。
二人がそんなやり取りをしているうちに、とうとう虚無僧が勢いよく振り回した鉄球が、義勇達を一掃するように横薙ぎに飛んでくる。
四人は一斉に方方に飛散した。
「奴の攻撃は範囲が広い。四人で撹乱して、攻撃の穴を突いていく!」
義勇の言葉に、三人はほぼ同時に「了解!」と叫んだ。
(しかし……、)と、義勇は、乱れるように飛んでくる鉄球を避けながら、陽華に視線を向けた。
(やはり…動きが鈍い。)
着物のため、いつもより一寸ほど遅れて動く陽華を、義勇が気にかける。
この鬼が上弦なのかも、深く被った笠によって、詳細はわからない。だが、確実にそれに匹敵するくらいの強さはありそうだ。
上弦の強さは、柱三人分。
守りながらの戦い、果たして自分に出来るのだろうか。
陽華は自分に向かってきた鉄球を既でのところで避けた。
(攻撃を穴を見つけて、霹靂一閃の高速技で決める!)
でも、先程からずっと虚無僧の動きに注視しているが、隙が全く見当たらない。
(これが上弦の力……、もし隙を見つけても、今の私の霹靂一閃だと、確実に止められる。)
そんなことを考えてるうちに、自分の方に鉄球が飛んでくる。陽華はそれを横に飛ぶことで回避するが、着地した途端……、
ブチッ
と音を立てて、草履の鼻緒が切れた。
やはり、いつもの戦い用に自分の足に固定された草履ではなく、一般用の草履では無理があったのだ。
陽華が「きゃっ!」バランスを崩して、その場に倒れかかる。しかしその時、運悪く二個目の鉄球が陽華目掛けて飛んできた。
(しまったっ!)
今の自分には回避する術がない。