第12章 進物 後編【冨岡義勇】
走り去った陽華を探して、義勇は庭園まで戻った。
「宇髄っ、陽華を見なかったか!?」
手持ち無沙汰に、ぽつんと庭園に佇んでいた天元に、義勇が慌てて問いかける。
「あ?いや、見てねーけど。つか、お前を追いかけて出ていったぞ?」
「そうか、すまない。」
落胆したように顔を陰らせ、背を向ける義勇に、天元が不愉快そうに眉を潜めた。
「相変わらず、辛気臭ーな。何があったんだ?…っておいっ、待てって!だから迷子になるから、行くなって……、」
天元が慌てて声を掛けるが、義勇は部屋から出て言ってしまった。
その場に取り残された天元は、所在なさげに苦笑いを浮かべると、ため息をついた。
「だから…、俺はどうすりゃいいんだよ。」
・
庭園から出た義勇は、また通路に戻ると来た道を引き返す。通路内は横道を含め、隈なく探したが陽華の姿はなかった。
「後はここか…、」
と、関係者入り口の扉の前で、立ち止まる。
義勇は掴んだ取っ手をゆっくりと捻り、扉を開けると静かに中に入った。中は長い通路になっていて、小道具などが散乱している。恐らく、演者の忍者達などが移動などに使う通路なのだろう。
(…陽華は何処に行った?)
通路を見渡してみるが、ここにも姿がない。義勇は来た道を戻ろうと、踵を返した。
数メートルほど戻ると、義勇の耳に微かだが、誰かが啜り泣くような声が聞こえきた。
「……?」
義勇は声のするその壁の前に立つと壁に手をついた。隠し扉になっているのか、軽く壁で押すだけで、スッと壁が動く。
中を覗くと、そこは人が隠れられそうな半畳ほどの空間があり、その中央に陽華が蹲っていた。