第12章 進物 後編【冨岡義勇】
義勇が部屋を出ようと、踵を返した時だった。突然、『バンッ!』と音を立てて、天井の扉が開いた。
「あらっ!!冨岡さん!?」
「こ、胡蝶!?」
義勇のちょうど上、天井の隠し扉から、しのぶが落ちてきて、義勇は慌てて受け止める体制を取った。
「きゃっ!!」
「くっ!」
義勇の腕がしのぶを受け止める。だが、突然のことで体制を崩してしまい、義勇はしのぶを抱きしめる形でゴロゴロと床に転がった。
そのまま二人で壁にぶつかり、止まると、義勇は軽く呻きながら、ゆっくりと体を起こした。
「つっ……、こ…胡蝶、大丈夫か?」
「まさか、いらっしゃると思わなくて、すいません。ありがとうございます、大丈夫です……って、あら?」
しのぶが目を開けると、義勇はしのぶの上に四つん這いに覆いかぶさった状態だった。
「…あっ、済まない。…体制を崩して……、」
「いいえ、こちらこそ。」
そう言って横を向くしのぶの目に、扉の前で佇む人影が映る。
「あっ、陽華さん!!」
その言葉に義勇がハッとして顔を上げる。すると数メートル先、部屋の扉の前に、陽華が立っていた。
その顔は、驚いたように強張っていた。
「………嘘、義勇さんが……しのぶちゃんを………、」
陽華が信じられないと言った表情で後ずさる。
「陽華、これは……、」
義勇が慌てて声を掛けるも、陽華は聞きたくないとばかりに、首を振った。
信じたくない。けどこの状況は、どう見ても誰が見ても、義勇がしのぶを押し倒していて……、
「私、あの…、ご、ごめんなさい!!」
陽華は即座に頭を下げ、義勇に背中を向けた。
「陽華っ!!」
義勇の静止する声も聞かず、陽華は部屋から出ると、逃げるように走り出した。
(だって、あんな場所で二人であんなこと……、ううん、それよりっ!……義勇さんは……しのぶちゃんを選んだんだっ!)
いきなりの事で呆然とする義勇に、下からしのぶが語りかける。
「あの〜、追いかけなくていいのでしょうか?」
「あっ、そうかっ!」
義勇は慌てて立ち上がり、陽華が出ていった扉から、室内を出た。