第12章 進物 後編【冨岡義勇】
一方その頃、義勇を探すしのぶは二階にいた。
裏道を駆使して、地下を探すも見つからず。もしかしたら、自分を探して上まで戻ってしまったのか?と、戻って来てみたが……、
「もう…、冨岡さんはどちらに行ってしまわれたのでしょうか。」
あまり動かれると、自分達が一般の客とは違う通路で動いていることや、これが巧妙に仕組まれた計画であることが、バレてしまうかもしれないのに。
(でも、冨岡さんなら、大丈夫か。)
義勇の鈍感さに、若干の安心感を感じながら、しのぶは目の前にあった扉を開けた。
「あらっ、一番初めの部屋に戻ってきてしまいました。」
義勇とはぐれた場所。見覚えのある部屋まで、戻ってしまったようで、しのぶはため息をついた。
「一度、宇髄さん達と合流したほうがいいですね。もしかしたら、もうあちら側にいるかもしれませんし……、」
しのぶは義勇の消えた壁に手をつき、軽く押した。
壁がギギっと音を立てて、ゆっくりと動く。先刻は普通の壁になってしまっていたが、また隠し扉に戻ったようだ。
「こちらの方が近道ですね。」
しのぶはそう呟くと、壁を押して、回転した扉の中へと入った。
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地下庭園を出た義勇は通路を進み、階段の前まで来ると立ち止まった。
恐らく一階へと続く階段だろう。義勇は登ろうかと一瞬迷ってから、反対側の通路に視線を向けた。そこから先は薄暗い廊下が続いていて、義勇まず、そっちの方にいってみることにした。
(…胡蝶、どこだ?)
通路の先は、先程の地下庭園とは違い、どんよりと薄暗い。途中、何個かの横に入る道と関係者用と書かれた扉をあったが、義勇は真っ直ぐに進み、正面にあった鉄格子の扉、その扉に近づいた。
扉にはご丁寧に【地下牢】と書かれていた。義勇が扉を軽く押してみると、カチャと音を立てて扉が開く。鍵は掛かってないようだ。
室内に入ると、そこは窓もなく閉塞的な空間になっていて、僅かに嗅いだことのある湿り気を帯びた空気が、義勇の鼻腔を擽った。
「ここは…先程の部屋か?」
義勇が倒れていた部屋。さっきは明かりなどなく暗闇だったが、冷たい床や室内に漂う空気が、ここで間違いないと告げていた。
しかし、しのぶはいない。やはり上の階に行ったほうが良さそうだ。