第12章 進物 後編【冨岡義勇】
『お前、どーでもいいけど、早く告れよ。』
天元の言葉に、陽華の顔がこれ以上ないまでに真っ赤に染まった。
「ちょっと、こんなとこで!こっちきてくださいっ!」
陽華は鳥かごの外まで、天元を連れ出すと、義勇に背を向けたまま、天元とひそひそ話しを始めた。
『だって、当初の計画と大きく違うじゃないですか!?こんなんじゃ、告白なんてできませんよっ!』
『は?だって、今言わなきゃ、いつ言うんだよ。鐘はすぐ目の前だぞ?』
だって、もっとおとぎ話のように盛り上がるものだと思っていた。
陽華の窮地に駆けつけた義勇に、か弱いお姫様のように助けられ、いい雰囲気になって、告白する流れを想定していたのに。
「むぅ…」と陽華が黙り込むと、後ろから、いつの間にか鳥かごから出てきた義勇が声を掛けてきた。
「ところで、胡蝶はどうした?」
その瞬間、「あっ!?」と言う形で、二人の顔が固まる。
「そういや忘れてたけど、お前を探しに行ったんだった。」
天元がそう答えると、義勇の顔が陰る。
「そうだったか。……俺が不甲斐ないばかりに、胡蝶に迷惑を掛けてしまったようだな。……探してくる。」
そう言うと、義勇は入り口の方に走り出した。
「おい、下手に動くなっ!お前まで行方不明になったら、後が大変……、」
天元を言葉を無視して、義勇は部屋から出ていってしまった。「たくっ…、」と頭を掻く天元の横で陽華は、義勇の出ていった扉をじっと見つめていた。
「義勇さん、本当に心配してる顔をしてた……、」
「まぁそうだろうな?元はと言えば、アイツが原因だし……、」
そう呟いた天元の言葉も聞こえずに、陽華は落ち込んだように、顔を俯かせた。
(もしかしたら…義勇さん、本当にしのぶちゃんのこと……?)
嫌な胸騒ぎがする。
「私も探してきます!!」
「だから、お前まで……って、待てよ、陽華ーー!」
小さくなっていく陽華の背中を見て天元は、「チッ」と小さく舌打ちした。
折角、もう帰れると思ったのに……