第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「じゃあ、このまま冨岡が起きなくてもいいのか?」
「そ、それは……、」
陽華が言いよどむと、天元がビシッと人指し指を向けて言った。
「いいか?これは人助けだ!人助けなら、数に入らねーだろ?誇り高き鬼殺隊員なら、柱ならっ!覚悟を決めろ!!」
「う…うぅ…、じゃあせめて、宇髄さんは目を瞑っててください。……人前では……、」
「わーったよ。」
天元が両手で顔を覆う。と見せかけて、指の隙間から、ガン見する。
それを見届けると、陽華は義勇の顔の横に手を付いて、義勇の顔に覆いかぶさるように近づいた。
(義勇さんの顔に、こんな近づいたの初めて、……わぁ…すっごい綺麗な肌、睫毛も長くて、本当に…綺麗な顔…。私…本当に……今から……、)
そう思った瞬間、顔が茹でたこのように真っ赤に染まった。
「やっぱり駄目です!尊すぎて、出来ませんッ!」
「あ?本当にめんどくせー奴だなっ!なら、俺が手伝ってやるよ!女なら、根性みせやがれー!」
天元の手が陽華の後頭部を掴み、グッと押さえつける。
「やぁーー!!後生だから、やめてーーー!!」
義勇の唇まで、数センチ……、もう駄目だ!そう思い、陽華が諦めて目を閉じた、その瞬間……、
「……陽華?」
「はうっ!!ぎ、義勇さん!!」
慌てて目を開けると、焦点が合わないほど間近にいた義勇と、ぎりぎり目があった。
「ふんっ!!」
これが火事場の馬鹿力というのだろうか。陽華は床に着いた手に、全身全霊の力を込めると、自分でも信じられないほどの力で、頭を抑え込んでくる天元の手を無理矢理に押し返した。
「うぉっ!!……お前…やるな?」
まさか、陽華に跳ね返されるとは思ってなかった天元が、跳ね飛ばされた手のひらを見つめながら、関心して唸り声を上げる。
「義勇さん、大丈夫ですか!?」
「陽華…、俺はどうして……、」