第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「で、計画ってなんですか?」
「フッフッフ、それはだなっ!!……名付けて、【囚われのお姫様救出作戦】だっ!」
「とらわれの……お姫様?」
陽華の瞳がさらにキラキラと光りだす。恋する乙女にとって、なんと心を擽る単語なのだろうか。
「そ、それは、どういう?」
「まずはお前を、鬼に攫われたことにする。それを冨岡に伝えて、助けに行かせるっ!っちゅー作戦だ。助けて貰った後は、お前が告って、そして最後は、二人で仲良く【愛の鐘】を鳴らすんだよ!」
天元がドヤ顔で作戦内容を伝える。が、作戦を聞いた陽華の顔が軽く曇った。
「え…でも…、義勇さんを騙すなんて、出来ませんッ!」
「そこは気にすんな。後で全員で思いっきり謝り倒せばいいーんだよ。それともお前は、窮地を大好きな王子様に助けて貰いたくねーのか?」
大好きな王子様に、助けてもらう…。
天元の魅惑の言葉が脳内に何度も響き渡る。
「…うぅ……、貰いたいです!!」
「なら、決まりだな!俺が見た見取り図によると、この計画にあつらえむきな地下庭園がこの先にある。お前はそこで、鬼によって捕らえ、幽閉される。」
天元は陽華がうんうんと頷いたのを確認すると、しのぶの顔を見た。
「胡蝶お前は、取り急ぎで申し訳ないが、冨岡探しを続行してくれ。見つかったら事情を話して、陽華を助けに行くように促すんだ。」
「はい、承知致しました!」
「しのぶちゃん、ありがとう。」
「いえ、私もなんだか楽しくなってきました。頑張りましょう、陽華さん!」
そう笑顔で答えると、しのぶは壁に手を付き、出現した隠し扉から出ていった。
先程まで、義勇のことが好きだと言っていたのに、自分に譲り、さらに恋の応援までしてくれるなど、なんていい娘なのだろうか。
「今度蝶屋敷に寄る時は、生姜の佃煮、いっぱい買って行くからね。」
そう呟くと、陽華は溢れ出そうになった涙を軽く拭った。
「おい、ぼーっとしてねーで、お前は準備だ!!……いいか、陽華?」
天元が意味ありげにニヤッと微笑むと、陽華の顔を見る。
「こっからは、ド派手に行くぜっ!」
「はいっ!!」
陽華は、覚悟を決めたように大きく返事すると、先を歩く天元の後を着いていった。