第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「しのぶちゃん、聞いて!!……さっき、しのぶちゃんの義勇さんへの気持ちを聞いた時、私…勇気が無くて…、本当のことが言えなかったの!…だから、今言うね!私も義勇さんの事が好きなの!!だから、もしまだ間に合うなら、しのぶちゃんとは正々堂々と…「そうですか!!」
陽華の言葉を遮って、しのぶが陽華の手を握り返す。
「それならば、私は身を引きます!だって、お二人共、とってもお似合いですから!」
「へ?…そ…そう?でも、いいの?」
「はい!私のことはお気になさらずに!私、全力でお二人のことを応援させて頂きます!!」
「しのぶちゃん、ありがとう!!」
陽華は感動で潤んだ瞳を拭うと、満面の笑みをしのぶに向けた。しのぶも笑顔で返して、二人が嬉しそうに笑い合う。
しかし、二人の仲直りに天元が水を差す。
「なぁ、感動の仲直りの最中に悪いんだがよ。胡蝶、そろそろ俺の上から、降りてくんねーかな?」
「あら宇髄さん、申し訳ありません。」
軽く謝ると、しのぶは蝶のごとくヒラッと天元の上から降りた。
しのぶが降りると天元は起き上がって、おかしな方向に曲がった首をポキポキと鳴らした。
「胡蝶、何でこんなとこに落ちてきたんだ?」
「それが…、上を歩いていたら、突然床がパカッと開いて……、」
その言葉に、天元が『お前のせいじゃねーか!』とばかりに陽華を睨む。陽華は済まなそうに「すいませーん。」とペロッと舌を出した。
「で、冨岡は?」
「…申し訳ないです、はぐれてしまいました。冨岡さん、隠し扉に吸い込まれるように消えてしまって。」
反省するようにしのぶが項垂れるが、なんとなくその場の状況を察して、天元が苦笑いを浮かべる。
「でもまぁ、結果的には合流できたから良しするか。冨岡のいる場所も目星は付いてんだろ?」
「はい、恐らく……、」
しのぶが視線が床に向く。その方向に天元も視線を向ける。
「…地下か。」