第12章 進物 後編【冨岡義勇】
しのぶが慌てて声をかけると同時に、ギギっと小さく音がなると、義勇が寄りかかった壁がスルッと動いた。
「っ!?」
構える間もなく、義勇が突然開いた回転壁に吸い込まれるよう姿を消した。
「冨岡さんっ!!」
慌ててしのぶが壁に手を着くが、そこはもう普通の壁になっていて、ビクともしない。
「もうっ!!予定にないことはしないで頂きたいですねっ!」
しのぶは微笑みながらも、額に青筋を立てて、辺りを見回す。
(この先の部屋に辿り着くには、この先の通路を……)
しのぶは頭の中の見取り図を引っ張り出すと、最速ルートを弾き出す。そして解き掛けだった伽羅倶梨を解除し、開いた扉に向かい一気に走り出した。
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伽羅倶梨を解除しながら、先へと進む天元と陽華は、これで四番目となる部屋に入った。
「また、同じような部屋ですね?」
正方形の四角い部屋に出口が三つ。違うといえば、正面扉の横の壁には、5×5のマス目状に25個のボタンが設置されていることか。
これまでの部屋の伽羅倶梨の種類は様々だった。部屋の何処かにある隠し扉の中から、隠された扉のスイッチを探し出したり、壁に設置された「組絵」を完成させて正解の扉を開けたり、なぞなぞを解いたりと、どれもお子ちゃま向けな仕掛けばかりだった。
さらに天元は、答えを教えて貰ってるらしく、次々と問題を解いていく。ただ見ているだけの陽華は、若干の退屈さを感じていた。
「あのボタンのどれかを、押せばいいんですかね?」
「そうだろうな。まぁ、こんなの今まで通ってきた経路を覚えてりゃ、瞬殺だけどな」
天元がボタンに近づこうとするが、陽華がそれを制する。
「待ってください!今度は私が解きます!!」
折角、伽羅倶梨屋敷に来たのに、全て天元任せで何も楽しめてない。
陽華は天元の代わりにボタンに近づくと、じっと見つめた。
よく見ると、最下段右下のボタンの下に、上向きの矢印が付いている。
これが手がかりだとすると……、
陽華は少しだけ考えると、突然躊躇なく、ド真ん中のボタンを押した。
「おい、そこじゃっ……」