第12章 進物 後編【冨岡義勇】
そこは、前後左右を白い壁に囲まれた四角い空間だった。前と左右に扉が一つづつ、三つの扉があるのみの簡素的な造。
「……って、とっても質素な部屋ですね?」
「まぁ、忍者なんてものは忍んでなんぼの、地味な連中の集まりだかんな。着飾る必要もねーだろ。……とりあえず、」
天元は部屋の中を見渡すと、ボキボキと指鳴らした。
「ちゃちゃっと解いて、さっさと先に進むぞ?」
「はいっ!!」
・
しのぶと義勇が入場した左側の入り口は、入るとすぐ目の前に、上へと続く階段が設置されていた。
「こちら側の迷路は、上の階から始まるみたいですね。」
しのぶの言葉に、義勇は目の前にある階段を見上げた。
外から見た屋敷は、二階建て以上の高さがあった。おそらく右の入り口は一階、左の入り口は二階と分けられているのだろう。
しのぶが階段を登り始めると、その後ろを義勇も静かに付いていく。
登りきると、長い廊下になっていて、左右に三つづつと正面に一つ、扉が設置されていた。しのぶは迷うことなく、スタスタと通路を進むと、正面の扉の取っ手に手を掛けた。
その様子に、義勇が問いかけた。
「胡蝶、目的は内部の調査ということだったが、他の部屋はいいのか?」
義勇が来た道を振り返る。
「そうですね、私もこの中に入るのは初めてですし(見取り図は頭に入ってますが…)、確認したいのは山々なんですけど、でもその前に次の準備まで時間がないんです。」
「次の…準備?」
義勇が訝しげに眉を顰める。
「それに見取り図によると、手前の扉はほぼ見せ掛けで、正解はここの扉だけなんですよ。」
そう言うと、しのぶは目の前の扉を開けて部屋の中へと入る。義勇もその後に続いて、部屋の中に入る。
中は四角い空間になっていて、正面は行き止まり、左右に扉が一つづつ、設けられていた。
しのぶは部屋の中央まで来ると、ピタッと立ち止まり、辺りを見渡した。
「どうした?」
「たしかこの扉は……、」
しのぶがぶつくさ呟きながら、頭の中の見取り図を思い出す。そして数歩下がると、その横の壁に手を付いた。
そのまま、何を探すように手を滑らせる。そして探り当てた一点をコンコンと拳で軽く叩いた。
すると壁の一角が横にズレ、穴が開いた。そしてその中から取っ手のようなものが出現した。