第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「たくっ!随分と長い沈黙だったが、一体何を妄想してやがった、この色ガキっ!!」
「そんなの恥ずかしくて、言えないですぅ!!」
陽華が顔を真っ赤にして、ブンブンと首をふる。でもすぐに落ち着くと、悲しげな表情を浮かべた。
「でも私には、こんな妄想する権利さえ、ないんでした。」
「あ?なんでだよ。」
「だって私、一度諦めて…逃げちゃったんです。そんな私が義勇さんの横に立つなんて、…そんな資格ないんですっ!」
陽華が今にも泣きそうに瞳を潤ませると、天元は全てを一掃するように、それを鼻で笑い飛ばした。
「資格?ンなもん、必要あんのか。」
「え?」
「最終的な決断を下すのは、自分だし、相手だ。そこに資格があるとかないとか、関係ねーだろ。」
飄々と答える天元を、陽華は驚きに満ちた表情で見つめた。
「宇髄さん、師範て呼ばせて貰ってもいいですか?」
「お前も俺様の凄さが、身に沁みてわかったようだな?……だが、俺は出来損ないの弟子はイラねー。で、お前はどうすんだ?胡蝶にこのまま、取られていいのか?」
「それは…嫌ですっ!!私、しのぶちゃんにちゃんと伝えて、正々堂々と戦います!!」
陽華は覚悟を決めたように、真っ直ぐと天元を見据えた。だがその顔もまた、すぐに絶望に変わる。
「あぁ〜でも、しのぶちゃんて、凄く可愛いし、年下なのに私よりも色気あるし…、今頃告白とかしてたら…、いかに硬派な義勇さんでも……、」
「ころころ感情変えて、忙しい奴だな!うるせーんだよ!今はそんなこと考えんなっ!それにお前の惚れた男は、見た目で女を選ぶような男なのか?」
天元の問いかけに、陽華はぷるぷると首を振った。
「いいえっ!義勇さんはそんな人じゃありません!!」
「だろ?それに安心しろ。お前も充分可愛いからよ。」
「う、うじゅいさ〜ん!!」
天元の奥方様達は、美人揃いだ。そんな天元の言うことなら、本当かもしれないと、陽華が嬉しさに瞳を潤ませる。
が、すぐに真顔に戻ると、自分の身体を庇うように抱きしめた。
「やだっ!…もしかしたら私を四番目の妻に…とか、思ってますか?」