第12章 進物 後編【冨岡義勇】
「おい、今俺のこと呼んだろ?」
「きゃっ!」
突然横から声を掛けられ、小さく声を上げた陽華が慌てて振り向く。
するとそこには、たった今話題になっていた人物、音柱の宇髄天元と、そして蟲柱の胡蝶しのぶが立っていた。
「よっ、お二人さん。」
「こんにちわ。陽華さん、冨岡さん。」
「えっ!?なんで、二人ともここにいるの?」
いるはずのない場所にこの二人がいて、陽華が驚いて問いかける。が、義勇はさほど驚いた素振りは見せず、「またか…」と言う表情を浮かべた。
「なんでって…なぁ?仕事に決まってんだろ。」
天元がしのぶと目配せを交わすと、そう答えた。しかしその答えに陽華はまた、納得出来ない顔を浮かべた。
「宇髄さん達もですか?ここは、私の担当なのに……、」
「あぁ…それなぁ…、」
天元が面倒くさそうに頭を掻いた。
「陽華お前さ、今日誕生日なんだろ?だからお館様が、気を使って俺たちを召喚したんだよ。」
「そんなに気を使っていただなくても……、」
「まぁ、そう言うなって。」
明るい調子で返す天元に、同意するようにしのぶも答える。
「いつも過酷な労働をお願いしてる柱達に、誕生日だけは心静かに過ごして欲しいと願う、お館様のお優しい心遣いですよ。」
ニコッと微笑むしのぶ。それを聞いて義勇も「そうだな。」と呟くと、陽華に視線を向けた。
「お館様の意向も組んで、今日は宇髄達に任せたらどうだ?」
「うん…、そうですね。」
納得出来ないと言っても、もう天元達も来てしまっている。それなら、より事情を知っている二人に任せた方が賢明だろう。
「でもま、どうしても気が引けるって言うんなら、そんなお前に朗報だ。」
「え?」
「お前達、どうせ暇なんだろ?俺達今、すげー困ってんだわ。」
そう言って、にこやかに笑顔を浮かべた天元に、とりあえず人気のない屋敷裏まで連行された。