第11章 進物 中編【冨岡義勇】
いつもと変わらない男前の顔に戻った義勇に、安心した陽華も身体を起こす。すると、陽華の懐から紙のようなものがヒラヒラと舞い落ちた。
「何か落ちたぞ?」
義勇が陽華の懐から落ちた紙切れを拾い上げる。
「あ…それ、村田さんの……、」
それは村田から貰ったチラシだった。
「村田?」
「いや、何でもないですっ!」
陽華が慌てて首を降る。そんな様子に首を傾げながら、義勇はチラシに目を通した。
「本日開店…、どきどき♡忍者屋敷…伽羅倶梨迷宮?」
「あっ、それ!炭治郎が言ってた娯楽施設じゃないですか?」
陽華が義勇の横から、チラシを覗き込む。どうやら忍者屋敷を模した、からくり迷路が売りの娯楽施設のようだ。
「へぇ…、なんかお子ちゃま向けの遊戯施設みたいですね。」
大人な私達が行くところじゃないわね…と、陽華がムフフと微笑みながら、再度チラシに視線を落とす。
その時、ちょうど目に入ったチラシの最後の一文に、陽華の目が一瞬で釘付けになった。
【愛が深まる鐘の音♡】
迷宮の最後にある愛の鐘♡愛しあう二人が一緒に鳴らせば、その愛は永遠に。好きな人と鳴らせば、両想いになれるよ♡
陽華の目が、その一文を何度も反復するように辿っていく。
(両想い…両想い…、義勇さんと…鳴らせば……、)
やがて一つの結論に達した陽華が小さく呟いた。
「………きたいです。」
「ん?」
小さくて聞き取れなかったのか、義勇が聞き返す。すると陽華はグッと義勇に詰め寄った。
「私、ここに行きたいです!!絶対にっ!!」
そう言った陽華の鬼気迫った迫力に、義勇の身体が引き気味にのけ反る。
「お前が行きたいなら、俺は別に構わないが…、」
「なら、次の行き先は忍者屋敷ですねっ!!義勇さん、張り切っていきましょーーー!!」