第11章 進物 中編【冨岡義勇】
しばらくして、頼んだものが運ばれて来ると、陽華は「美味しそう!」と叫びながら、ぱぁーっと顔を輝かせて、笑顔を浮かべた。
(……可愛い。)
そんなことを思っていた義勇の横では、運ばれてきたすぃーとぽてとがまるで飲み物のように、杏寿郎の口の中に吸い込まれていく。
「うまいっ!うまいっ!うまいっ!」
「煉獄、もっとゆっくりと味わって……、」
義勇が見かねて声を掛けようとすると、陽華がそれを遮るように身を乗り出して杏寿郎を声をかけた。
「煉獄さん、凄い!男らしいです!!」
その言葉に義勇が反応した。
(これが…男らしいのか?)
まずい、煉獄は柱の中でも男気順位が高い。下手したら陽華の中の尊敬する人上位の座を奪われるかもしれない。
「お、俺も食べようっ!」
「あっ、義勇さんも食べますか?同じ物で大丈夫ですか?何個食べます?」
「………じ…十個。」
「え!?そんなに食べるんですか?さっき、ご飯食べたばかりですよ?大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ。甘い物も別腹…と言うのだろ?」
義勇が多少無理して言うと、その言葉に賛同するように蜜璃と杏寿郎がにっこりと笑った。
「冨岡さん、わかってるわぁ!」
「そうだなっ!甘い物なら、無限に入る!」
(……お前達は、別腹を語るな。)
隣で大きく頷く化け物どもに、義勇は冷たい目を向けた。
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「義勇さん、少し顔色が悪いです。大丈夫ですか?」
陽華が心配そうに、青い顔で前かがみに電信柱に寄りかかる義勇の顔を覗き込み、その背中を優しく撫でてやる。
あの後、まだ食べ足りないと言った杏寿郎・蜜璃の両名を置いて、甘味処の外に出た義勇の顔は間違いなく青白かった。
(あの化け物どもと、張り合おうとした自分が馬鹿だった。)
込み上げる吐き気に口元を抑えると、義勇は「大事ない。」と気合を入れ直すように息を吐き出して平静を装い、いつもの姿勢と顔に戻した。