第11章 進物 中編【冨岡義勇】
「ち、違いますっ!今日は私の誕生日だから、義勇さんは兄弟子として、私の我儘に付き合ってくれてるだけなんですっ!」
変な誤解をされたら、義勇に失礼だと、陽華は慌てて説明した。しかしその横では、実弥の件でだいぶ落ちていた義勇が、
(そんなにはっきりと否定しなくても、よくないか?)
と寂しい気持ちで陽華を見ていた。
そんな義勇の気持ちを知ってか知らずか、誕生日だと聞いた杏寿郎は満面の笑みで陽華を見た。
「誕生日か、それはめでたいな!なら、今日は俺が奢ってやろう。二人共、立ってないで座ったらどうだ?」
「いや…俺達は二人で……(こんな場所にいたら、胸焼けを起こしそうだ。)」
義勇がテーブルの上に山のように積み上がった皿を見詰めて答えると、その横で陽華が嬉しそうに声を上げた。
「いいんですか?じゃあ、お邪魔しまーす♪」
(陽華、お前な……、)
義勇はため息を一つ付くと、蜜璃と嬉しそうにはしゃぐ陽華に付き添い、杏寿郎の隣の椅子に腰掛ける。
席に座るとすぐに、陽華が皿の壁を掻い潜り、杏寿郎の皿に乗った菓子を覗き込んだ。
「煉獄さんの美味しそう。何を召し上がってるんですか?」
陽華が問いかけると、杏寿郎は自分の食べている皿の菓子を見た。
「これか?すぃーとぽてとと言うらしい。一度蒸したさつまいもをすり潰して、砂糖と牛乳を入れて再度固めて焼いたそうだ。滑らかな食感で旨いぞ!」
「美味しそう!私もそれにしますっ!」
陽華が目を輝かせて言うと、杏寿郎はうんうんと頷いた。
「そうか!なら、俺も後十ほど追加しようっ!」
(………十?)
もうすでに十分な皿が積み上がっていると言うのに。義勇はそれを引いた目で見ると、「俺は飲み物だけでいい…。」と呟いた。