第11章 進物 中編【冨岡義勇】
「不死川さん、私、お手伝いしますっ!」
「だからっ!!勘違いすんなァ、こりゃ妹にだァ!」
「え?妹さん?でも…御家族は…、」
前に聞いたことがあった、実弥の弟の玄弥と任務を共にした時の事だ。義勇にあまりにも冷たい実弥の実態を探ろうと問い詰めたことがあった。
玄弥も素っ気なくて(目すら合わせてくれなかった)、詳しい事は聞けなかったが、一つだけは教えてくれた。
「…玄弥君から聞いたことあります。家は鬼に襲われて、家族はもう…お兄さんと二人だけだって…、」
「チッ、アイツ…余計なことを言いやがって。そうだ、妹が生きてりゃの話しだァ。こういうのが似合ってたんじゃねぇーかってよォ。」
少し自嘲気味に笑いながら、簪を見つめる実弥を見て、陽華の顔がサァっと青ざめる。
「……ごめんなさい。」
早とちりで余計なことをしてしまったと、陽華がしゅんと項垂れ、謝罪する。すると、後ろで事の成り行きを見ていた義勇が一歩前に出た。
「不死川、俺からも謝罪する。俺の妹弟子が…、」
言いかける義勇を、実弥がギロリと睨んで制した。
「別に気にしちゃいねェーよ。鬼殺隊にいる以上、大勢の隊員が同じような目にあってんだァ。お前らだってそうだろ?」
「不死川……、」
実弥はそう言ってくれたが、それでも陽華の気分は晴れなかった。余計な詮索で実弥の思い出を汚してしまったことは否めないからだ。陽華は何かを言おうと口を開きかけるが、言葉にならずに閉じる。
そんな陽華に実弥も気まずさを感じ、場の雰囲気を変えようと口を開いた。
「しかしなんだァ。女ってのは本当に喋んのが好きだな。うちの妹達も人の話も聞かねェーで、ずーっと喋ってやがった。」
実弥の気遣いに気づき、陽華も慌てて笑顔を取り繕う。
「はい、女の子はお喋りが大好きです!特に恋バナは乙女の好物なんですよ。」
そう言って、少し遠慮がちにニッコリと微笑む陽華の顔が妹と重なり、実弥はプッと吹き出した。
「な、なんで笑うんですか!?」