第11章 進物 中編【冨岡義勇】
陽華は今はまだ、顔つきも言動も幼く、妹のような印象の方が大きい。だがきっとすぐに大人になってしまう。
あんなにも人懐っこい性格では、勘違いして言い寄る男もたくさん出てくるだろう。そうなれば、陽華自身も本当の恋というものを見つけ、義勇の側から離れていく。
(その時に俺は心から笑って、陽華におめでとうと言えるのだろうか?……わからない。)
今まで感じたことのないほどの黒く淀んだ感情が胸を強く締め付け、義勇は思わず胸を抑えた。
「義勇…さん?」
声をかけられ、ハッとして顔を上げると、リボンを選び終えたらしい陽華が義勇の隣に戻っていた。
「少し顔色が悪いです、大丈夫ですか?具合が悪いなら、屋敷に戻って休みますか?」
顔を覗き込む陽華の顔は、心の底から義勇を心配していた。こんなにも純粋に自分をことを心配してくれる陽華に、こんな暗い感情を抱いたことが知れれば、陽華を失望させるかもしれない。
義勇はいつも通りに顔を取り繕うと、「大丈夫だ、問題ない。」と、安心させるように陽華の顔を見た。
結局、無難な桃色のリボンを選んだ小芭内は、店側から丁寧に包まれた贈り物を受け取ると、陽華達に振り返った。
しかしその手には、なぜか二つの包みが握られていた。その一つを陽華の眼前に突き付ける。
「礼だ、受け取れ。」
「え!?私にですか?う、受け取れませんっ、私は蜜璃ちゃんの為に…、」
「五月蝿い。お前が受け取らないなら、捨てるか燃やすかだ。早く取れ。」
そう言われては受け取らないわけには行かない。陽華は慌てて包み紙を受け取った。
「中を見ても?」
小芭内が頷いたのを確認すると、陽華は包み紙の封を解いた。中から出てきたのは…、
「これ……蜜璃ちゃんとお揃いですっ!」
蜜璃のリボンと色違いの黄色のリボンが出てきて、陽華は嬉しそうにそれを抱きしめた。