第11章 進物 中編【冨岡義勇】
「私、蜜璃ちゃんとはよく遊びに行くんですけど、蜜璃ちゃんは私服でも髪は三編みなんです。だから…、」
キョロキョロと店内を見渡し、リボンなどが飾られている棚を指さした。
「髪結い紐か、リボンの方がいいです。」
「そう…なのか?」
小芭内の身体が誘われるように、陽華に近づく。そして隣に立つと、棚に並ぶ色とりどりのリボンを見つめた。
「だとしたら、色は何色がいい?」
「一般的に小物や装飾品などを身に着けるときは、着ている服などの色に合わせて同系色、もしくは柄などに同系の色が入ったものを選ぶのが常識です。」
「うむ。」と小芭内が頷く。
「たまに差し色などで、まったく異なる色を使うこともありますが、素人がすると危険です!野暮ったくみられてしまうことがあります。……そうなると、羽織…隊服に合わせた白か黒かってことになるんですけど…、」
黒のリボンと白のリボンを交互に見て、陽華は小さく「違うな。」と呟くと、小芭内を見た。
「蜜璃ちゃんて、とっても素敵な髪色をしていますよね?そちらの方が目を引きますから、髪色を主軸で考えた方が得策ですね!」
「そうか。そうなると……桃色の同系色か、毛先の黄緑の緑系か……、」
二人して「うーん。」と唸りながら、あーでもないこーでもないとやりとりする後ろ姿を、義勇は一人、ポツンと所在無さげに見ていた。
(仲良くなってしまった……。)
陽華の人に対しての適応能力の高さには、いつも関心させられる。どんな相手でもすぐに懐に入り込んでしまうのだ。
本人は意図してる訳ではないのだろうが、誰に対しても別け隔てなく、誠実に向き合う姿が人の共感を得るのだろう。
その証拠に先程まで嫌悪感を露わにしていた小芭内の顔は、今や生き生きと輝いていた。
それどころか、同じ目的に向かう二人の姿はもはや同志だ。
義勇にはそれが微笑ましくもあり、時より寂しくも感じることがある。