第11章 進物 中編【冨岡義勇】
「だってじーちゃん、小言みたいな小難しいことしか書いてこないんだもん。読むのも面倒くさいよ!」
「しっかりしてよね!善逸の事は任せるって言われちゃったんだから。それに近い将来、善逸には私の継子になってもらう予定なんだからね?」
「はぁーー??そんなの無理に決まってるでしょー!」
全力で否定する善逸に、陽華の眉間のシワが濃くなる。
「なんでよぉ!?いい加減腹括りなさいよ、善逸はやれば出来るんだから!」
「無理だよーー!!俺、すごく弱いんだよっ??しかもまたあの地獄のような鍛錬の日々が始まるなんて、冗談じゃないよぉぉぉー!!」
そう言って泣きわめく善逸。そんな二人の漫才のようなやりとりを黙ってみていた義勇が突然、フッと小さく笑った。
「なんか似てるな、お前ら。」
「え??善逸とっ!?」
義勇の言葉に驚いて、返した声が裏返る。
「あぁ。…雷の使い手は、賑やかしいのが揃うのか?」
そう言って、首を傾げる義勇。
まさか善逸などと一緒にされるとは、愛しい人の口から放たれた一言に、陽華が衝撃を受けたように固まる。
そんな陽華の様子を見て、クスクスと笑う善逸が視界の隅に映り込む、その瞬間……、
「いでーーーー!!」
机の下で動いた陽華の高速の蹴りが善逸の足に命中し、善逸はもんどり打って、椅子から崩れ落ちた。
それから少しして、炭治郎と善逸がお互いのスネを慰めあっていると、陽華達が頼んだ定食が運ばれてきた。
「あれ?炭治郎達のは?」
「俺達、陽華さん達が来る前に食べ終わったんです。義勇さんもお腹が空いてるようだし、気にせずにどうぞ?」
炭治郎達が今まで見たことのないような、ホワホワな顔を包まれた義勇を見て、慌てて食事を促す。
「そうなんだ、じゃ戴きまーす!」