第11章 進物 中編【冨岡義勇】
陽華が顔を赤らめながら、(もう!義勇さんに嫌な思いさせちゃったら、どうするのよっ!)と慌てて訂正する。
すると炭治郎がさも今気づいたかのように、「あっ!」と声を上げた。
「そうかっ!そういえば、今日ですよね?陽華さんの誕じょ…っ…痛っ!!」
突然スネに激痛が走り、炭治郎は顔を顰めた。陽華が机の下で、炭治郎の足を蹴り上げたのだ。驚いて陽華の顔を見ると、「それ以上は何も言うな。」と暗に告げていて、炭治郎は押し黙った。
(もしかして、誕生日だってこと、義勇さんに告げてないのか……?)
炭治郎が珍しく空気を読み黙ったのを確認すると、陽華は「さ、さてと…、」と呟きながら、壁のお品書きを見た。
「義勇さん、鮭大根でいいですか?」
「あぁ。」
短い返事を確認すると、店の女将さんを呼び、鮭大根定食と自分には鯵フライ定食を頼んだ。
注文後に女将さんがお茶を運んできて、陽華の前に二つ置く。それを一つ掴み、義勇の前に差し出した。
「義勇さん、はいお茶です。」
「あぁ、ありがとう。」
「熱いから気をつけてくださいね?」
「あぁ。」
義勇が頷き、お茶を一口飲んだのを確認すると、自分も一口啜り、ふ〜っと息を吐く。そんな一連の動きをジーッと見ていた善逸が頃合いを見図り、声をかける。
「それでお二人は、今から何処に行く予定なんですか?」
「陽華が買い物に行きたいというから、問屋街の方に行くつもりだ。その後はまだ決めてはいない。」
義勇が答える。
「へぇ…そうなんですね。」
善逸は軽く相槌を打つと、炭治郎に「今だ、言えっ!」とばかりに視線を送る。気づいた炭治郎が慌てて言葉を続けた。
「お、俺達っ、街の反対側から来たんですけど、向こうの入り口の辺りになんか面白そうな娯楽施設が出来てましたよ。まだ計画されてないなら、行かれてどうですか?」