第11章 進物 中編【冨岡義勇】
そんなことがあった三日後の今日。
間違いなく二人はこの街に現れると預言者みたいにおっしゃられたお館様の言葉を信じて、炭治郎は任務遂行の為、この地に足を踏み入れた。
炭治郎に与えられた任務は一つ。
二人に親しい立場を利用して近づき、ある場所に誘導すること。
しかし元来、人を騙したり欺いたりすることが不得手な炭治郎にとって、この任務は荷が重たかった。だから善逸に協力を願ったのだ。
そうして善逸と待ち合わせたこの定食屋で、作戦会議をしていたのだが…、
(まさか、お二人がこんなに早く昼食を取るとは…想定外だった。)
まさか作戦会議が終わる前に、陽華達に見つかるとは思わずに焦ってしまった。善逸がいなければ、間違いなく怪しまれていただろう。
(後で善逸には、お礼を言わなきゃな。)
そんなことを考えていたら、陽華の後ろから義勇も現れ、炭治郎はなるべく平穏を装いながら声を掛けた。
「義勇さん、こんにちは。ご一緒だったんですね?」
素知らぬ顔で義勇に声を掛けると義勇は「あぁ。」と小さく呟いた。
炭治郎は二人の顔を交互に見ると、諦めたように息を吐いた。
見つかってしまったのなら、今更足掻いても仕方がない、腹を括るしかない。
「もし宜しければ、ご一緒にいかがですか?」
炭治郎が机を指しそう問いかけると、陽華達は顔を見合わせ頷いた。その返事を確認した炭治郎は腰を浮かすと、善逸側に座り直し、若干上座な壁側を陽華達に譲る。
譲ってくれた席に義勇と隣同士に座ると、善逸が陽華の姿を見てニヤニヤと微笑んだ。
「陽華さん、そんなお洒落なんてしちゃって、今日は冨岡さんとデェト?」
「なっ!ち、違うよっ!これはお館様の考える、隊員を労おう計画の一環で……、」