第11章 進物 中編【冨岡義勇】
「では、手紙を…、」
耀哉が傍らにいた白い髪の女児に合図を送ると、その女児はこっくりと頷いて、懐から折りたたまれた紙の束を取り出した。
その一枚を抜き取り、広げる。
「こちらの手紙は元柱である、今は亡き花柱・胡蝶カナエ様が生前、風柱・不死川実弥様より受け取った手紙の数々です。一部、抜粋して読み上げます。」
「待て待て待てェえっ!読み上げんなァっ!!」
実弥が顔を真っ赤して、慌てて立ち上がる。
「お、お館様さまアァっ!!」
実弥はそう叫ぶと、慌てて女児に近寄り、その手紙を引ったくるように奪い取った。
「なになに?俺様、内容が超気になっちゃうんだけど?」
天元がニヤニヤしながら言うと、実弥は烈火の如く顔を赤くして、天元を噛みつくように睨みつけた。
「う、うるせェー!!大体、何でンなもんがっ!」
「しのぶが提出してくれたよ?」
耀哉が言うと、実弥はギロッとしのぶを睨みつける。が、しのぶは舌を出して「てへっ」と、笑って返しただけだった。
「これで実弥もわかっただろ?…潤いは誰にもでも必要なんだ。陽華と義勇のことは、実弥や皆にも認めて貰いたいと思っている。」
耀哉が満面の笑みでそう言うと、実弥は手紙の束を誰にも奪われないように握り締め、静かに列の中に戻り「御意」と答えた。
力なく項垂れた実弥のその姿を見て、小芭内は悟った。これを断ったら、次に辱めを受けるのは自分だ…と。
(提出していないと…信じたい……が、)
小芭内の瞳がチラリと蜜璃に注がれる。
だがきっと、耀哉は目的の為なら手段を選ばない。小芭内は素知らぬ顔を浮かべると、皆が口々に「御意」と答えるのに便乗し、小さく「御意」と口ずさんだ。
耀哉はそれを聞いて満足そうに頷くと「皆がわかってくれて、嬉しいよ。」とニッコリと微笑んだ。
斯くして、それぞれの任務内容と計画が耀哉の口から告げられ、それを確認した柱達と炭治郎は、別任務の与えられた天元としのぶのみを残し、各々準備のために解散していった。