第11章 進物 中編【冨岡義勇】
そう言って、再度善逸に視線を送ると善逸はコクリと頷いた。しかしその返答に、陽華は納得がいかない様子で首を傾げた。
「え?この付近は私の担当だけど、鬼の情報なんて入ってないけどな。」
「あ、いや…その…、」
陽華の返答になぜか言葉を詰まらせる炭治郎に変わって、善逸が説明する。
「まだ小さな情報なんだよ。まずは俺たち下っ端だけで…って話しでさ。それに陽華さん、今日はそんな格好してるってことはさ、非番なんだろ?だから情報も降りてこないんじゃない?」
「休みでも、情報は逐一入れて下さいって言ってるのにな、もう!」
ブツクサ文句を言う陽華に善逸が「まぁまぁ、何かわかったらすぐに伝えるからさ。」と声を掛ける。
そんな二人のやりとりを見て、炭治郎は心底安心したように息をついた。
(…やっぱり、善逸を連れてきて正解だったな。)
そんなことを思いながら、同期を頼もしく見つめる。
確かに炭治郎には、本当にこの地で任された任務があった。しかしそれは鬼退治ではなかった。しかも炭治郎一人で熟すには難しく、困った炭治郎は善逸に声を掛けたのだ。
(お館様ってば、いきなりあんなこと言い出すんだもんなぁ。)
炭治郎の脳裏に、産屋敷邸で執り行われた緊急柱合会議の様子が思い出された。
そう…あれは三日前のことだった……、
ー 三日前 産屋敷邸・緊急柱合会議
「お館様に置かれましても、御壮健で……(以下略)」
岩柱・悲鳴嶼行冥の挨拶から始まったこの会議。竈門炭治郎はなぜか、特別枠という事で招集されていた。そんな炭治郎に実弥がちらりと視線を送る。