第11章 進物 中編【冨岡義勇】
陽華と義勇が訪れたこの街は、この辺りでは一番栄えた大きな街だ。
多くの品が取り揃う問屋街や町屋、新鮮な食材の扱う市場。食事処などの飲食店も多く、殆どの生活必需品などがこの街で賄える。
また人通りも多いため、裏の情報も集まりやすく、陽華も収集のためによく利用する場所だった。
そんな勝手知ったる街に入り込むと、陽華は辺りを見渡した。平日の昼前というのもあるのか、人の姿は疎らで平穏そのものといった雰囲気だ。
目に付くと言えば、入口付近に佇む虚無僧風の大きな笠を被った、背の高い僧の男だろうか。がっちりとした体躯に、優に7尺はある背丈。
(まるで、悲鳴嶼さんみたい……。)
その姿に岩柱・悲鳴嶼行冥を思い出す。が、すぐに興味が薄れて、隣にいる義勇に目線を移した。
義勇は陽華と同じく、街の中を見渡していた。その凛々しく均整の取れた横顔をじっくりと見つめると、陽華は顔をにんまりと緩めた。
(きゃーー、明るい所で見る義勇さんて、なんて素敵なんだろう。)
出会った頃の義勇はまだ、格好良さの中にあどけない少年の可愛さも含んでいたが、最近は精悍さも兼ね備え、男らしく、大人の男性の魅力に溢れている。※あくまでも陽華の視点です。
うっとりと見つめていると、視線に気付いた義勇と目が合う。
「なんだ?」
そう問われ、即座に視線を反らすと「なんでもありません。」と答えた。
そんな不審な動きをする陽華を不審に思いながら、義勇が再度問いかける。
「それで、まずは何処へ行く?」
「うーん、そうですね。」
陽華が考えるように視線を上に向ける。
「買いたい物があるので、だからまずは問屋街の方に……」
そう言いかけた時だった。