第10章 進物 前編【冨岡義勇】
その着物は、向日葵のように明るい黄色地を主体としていて、明朗で快活な印象の陽華に良く合っており、さらに可憐な部分を引き立たせるように、色とりどりの花模様が裾に向けて流れるように描かれていた。
髪も着物に合うように整えられ、黄色の花飾りが添えられている。
その出で立ちはいつもの印象とは異なり、さながら、良家の子女といった佇まいか。
義勇はその姿を良く見ようと、立ち上がり陽華に近づいた。
するとその顔に、薄くだが上品に化粧が施されているのがわかった。粉を叩いて、桃色の紅を薄く敷いただけなのに、普段あどけない顔立ちの陽華がぐっと大人びて見え、義勇は静かに息を呑んだ。
「…可笑しくないですか?」
陽華が少し恥ずかしそうに俯き加減で義勇に問いかけた。
「…………」
何も言えず黙ったままの義勇を見ると、陽華は拗ねたように唇を尖らせて、義勇を上目遣いに軽く睨んだ。
「…やっぱり、言わなくていいです。どうせ、馬子にも衣装だな。とか言うんですよね?」
「よく、わかったな。」
「義勇さんの表情見れば、わかります!」
ぶーっと頬を膨らませる。そのいつもと変わらない可愛い陽華の姿を見て、義勇は安堵すると共に穏やかに微笑むと、ふわっと優しく陽華の頭に手を乗せた。
「でも、この言葉は褒め言葉にもなる。よく似合ってると言うことだ。見違えたぞ。」
そう言って、乗せた手で頭を軽く撫でると、陽華は恥ずかしそうに視線を下に向けた。
「あ、ありがとうございます。(わっ、義勇さんに頭撫でられちゃった♡)」