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【鬼滅の刃】屋烏之愛【新装版】

第10章 進物 前編【冨岡義勇】





頑なに否定し続ける俺の耳に、先生のふぅと呆れるようなため息を聞こえてきた。

「だがな、義勇。どういった経緯があったにせよ、お前が振るった刃があの子を助け、生かし、そして今また、生きていく為の道を示したことに間違いはない。」

先生は俺を真っ直ぐに見据えると、一段と力強く諭すように言った。

「お前はあの子を助けた責任を、負わねばならん。」

「責…任?」

この俺に一体どんな責任があると言うのか、俺は顔を上げると、困惑の表情で先生を見つめた。

「そうだ。助けたことが引き金となったのかはわからんが、お前があの子に与えた影響力はかなりの物だ。もうお前の思惑とは関係なく、お前はすでに存在自体が陽華が生きていく上での目標であり、道標となった。」

先生は俺から視線を外すと、調理場で作業を続ける陽華の背中に視線を移した。

「いいか、あの子の前ではけして弱い所を見せてはならん。見掛け倒しでも構わん、強い鬼殺隊員であることを示せ。もし万が一にでもお前が挫くことがあれば、それは陽華諸共だ。それを肝に銘じろ。」

「陽華…諸共……、」

先生の理不尽とも感じる要求に愕然とした表情を滲ませると、先生は今度は優しく諭すように言葉を続けた。

「義勇、あの子の為に強くなれ。そしてお前があの子の光になれたように、願わくば…あの子がお前の……、」

「……先生?」

この時の俺はまだ子供過ぎて、先生が言わんとしてたことを理解出来なかった。

そしてそのまま、考えるように押し黙ってしまった先生との間に気不味い沈黙が流れる。

その沈黙を破ったのは、

「おまたせしましたぁっ!」

とニコニコと微笑む陽華の、元気な声だった。








「そんなに見られていると、食べ辛い……、」

渡された小鉢に入った鮭大根を箸で掴み、口に運ぼうとする俺の動きを斜め右隣に座った陽華がじっと見つめて来る。

「あ、ごめんなさいっ!」

そう言って顔を赤くして俯く陽華を横目に、鮭大根を口の中に入れる。







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