第10章 進物 前編【冨岡義勇】
義勇の顔を見ていて、素直に思ったことを口にした妙だったが、義勇はなんだか隠された胸の内を見透かされた気がして、思わず目を反らしてしまった。
そんな義勇の様子を見て妙は『おっ、これは?』と驚いた。もう少し叩けば何かが出てきそうな…?そう思い、妙がさらにワクワクし出したその時だった。
「妙さーーん、どこぉーー?」
部屋に面した廊下の奥の方から、妙を探す陽華の声が聞こえてきた。
「あらあら…残念。お姫様が呼んでますね。」
妙はそう言い、にっこりと微笑むとお盆を抱え腰を浮かした。
「冨岡さん、お話楽しかったです。では、陽華さんの準備をしてきますね。楽しみに待っててくださいね。」
「?」
意味ありげに微笑む妙を、訝しげに見つめながら義勇は軽く会釈で返した。
妙が部屋から出ていくと、閉じられた襖の向こう側のさらに奥の方から、陽華の騒ぐ声が聞こえてきて、その元気の良さに義勇は思わず小さく吹き出してしまった。
本当にいつも元気すぎて、義勇を感心させる。
だが、今はこんなにも元気な陽華だが、さっき妙にも言ったように出会った時は違った。
最愛の家族を失ったばかりの陽華は死んだように無表情で、言葉もあまり発さず、義勇の問いかけにも静かに頷くだけだった。
行く宛がないという陽華に鬼殺隊への道を打診したときも、無気力に小さく頷くだけで、義勇はきっとこの娘は鬼殺隊ではやっていけないだろうと、そう思った。
だからこそ、二回目に陽華に会った時、義勇は心の底から驚いたことを思い出していた。
そう、あれは確か5年前の……、陽華を助けて半年ほど経ったくらいのことだったか……、