第7章 22【※冨岡義勇】
義勇が陽華を連れ帰って二日目。
陽華はまだ戻る兆候を見せていなかった。
縁側で丸まって、安心したように眠る陽華。義勇はその横に座り、その頬を優しく、手の甲で撫でつけた。
「にゃー。」
起きて顔をあげた陽華は、小さく鳴くと、その指先にスリスリと頬を寄せてきた。さらに一声鳴くと、ゴロンと仰向けになり、腹を撫でろと、義勇の脚を、前足でちょんちょんしてくる。
その可愛い姿に義勇は微笑み、優しく腹を擦ってやった。
穏やかな春の日常。……の、はずだった。
撫で始めてから暫くすると、陽華の様子が変わってくる。苦しそうに息を吐き出すと、顔を赤く染め、義勇を悩ましげに見つめてきた。
「ど、どうした?」
陽華は起き上がると、戸惑う義勇に、身体を擦り付けてきた。
「にゃー、にゃー。」
何度も求めるように、鳴かれ、義勇はハッとして、周りを見渡した。
庭の木々は青々と茂り、心地よい風が、義勇の頬をなでつけた。
季節は春。
義勇は、自分に縋り付く陽華を恐る恐る見やった。これはまさか…、
(は、発情期か!?)