第67章 ❤︎ 治店長とバイト店員の初体験 宮治
「恥ずかしい話やけど俺な、ここ二年くらい女抱いてないねん。だから自信ない」
「そんなん全然気にせぇへんもん。治君に経験なくても初めては治君がいいって思ってきたもん」
「無茶苦茶やな、お前…」
「あ、でもどこでするの?治君の実家?」
「両親+ツムもおんねんけど」
「あかんね。じゃあやっぱホテル?」
「そうなるわな。裏通りはホテル街やしクリスマス言うてもどっか空いてるやろ」
「うん。じゃあ私は治君について行く」
まっすぐな目から感じる熱い視線に感情は沸き立って自分でもえらい選択をしてしまったと思う。でも、ここで断って捨てるように他の男に抱かれるくらいなら自分であることが正解にも思える。言葉数少なく平常心を保ちながら身支度を終えて店を閉め、裏口のドアを開けると風が吹き抜け真冬の冷たさが襲ってくる。
「寒…っ」
「寒いけど、それ以上に緊張してる。…はぁ、ドキドキしてきた」
「やめてもええで?」
「んーん、行く。絶対行く」
外はすっかり夜の街の姿になっていて、照明に照らされたいちかの表情だけが見える。口元までマフラーに隠れぱっちりと開いた目に上目遣いされるだけで感情がかき乱される。これ以上踏み入れてはいけないと、頭のどこかで警鐘が鳴った気がした。