第72章 結婚するまで帰れません(１)　岩泉一

≫花巻side


及川ソロの撮影が終わった後、俺たちは控え室にいるいちかちゃんたちを呼びに行っていた。二人がいい感じだったらいいなぁとかまっつんと話していた矢先、真っ白な扉の向こうでは二人が歴史的瞬間を迎えていた。そして幸運なことにその瞬間を俺たちは見届けることができた。

「やばい。決定的瞬間、いや歴史が動いた瞬間を俺たちは見てしまったかもしれない」
「ばっちり写真撮った…」
「マジで…って、まっつんそんな本格的なカメラって持ってたっけ？」
「さっきカメラマンさんの持ってるカメラ褒めたら貸してくれた。見て？すげぇいいのが撮れた」
「なんてタイミングなんだよ」
「この瞬間に俺の運全部使ってたとしても後悔しない。それくらいに感動した」
「まっつん、格好良過ぎるから。俺、泣く…」

カメラの画面には控室でこっそりと唇を重ねる二人の姿。二人の軌跡を思えば、この瞬間こそが奇跡だって思わずにはいられない。

ただ一つ誤算だったのはまさかそれが企画書とはいえ表紙に使われるなんて誰も予想してなかったってこと。

それを見た及川の絶望、いや反応は流石の俺たちも同情せざるを得ないくらい悲惨なものだった。


next．




お読みいただきありがとうございました。【結婚するまで帰れません】はこの章で一旦区切りをつける予定だったのですが、今後の二人を性描写ありな展開を含めて描いていきたいという思いが強くなっています。少しお時間をいただきまして書ける環境が整いましたら連載を再開していきます。その時はどうぞよろしくお願いいたします。


2025/7/7　Kopi