第66章 ❤︎ 初恋は実らない　宮治

いくら体に刻み込むように抱いたとしても時間の経過とともに魔法は解ける。残された現実は互いに温め合った体温も奪っていく。

「例え過去に戻ってやり直そうとしてもいちかはツムを選ぶと思う。ほんで俺はいちかへの想いを隠したまま生きる。今更、たらればって思っても過去も現実も変わらんから」
「うん…」
「だから今はいろんなもん背負ってでもこの先だけ見るしかないやろ？」
「でもこの先のことを考えたら私はみんなの前からいなくなった方がいいと思う。こんな自分、一番自分が認めたくないから」
「例えいちか以外の人間がそう思ったとしても俺が嫌なんや。俺の前からいちかが消えることなんて絶対許さへん」
「許してくれなくていい」

涙声で震わせた言葉は俺にはSOSにしか聞こえなかった。頑なに拒むいちかですら全部愛しくて俺のできる全てを捧げてもいいと思った。

「なんでそんな悲しいことばっか言うねん…。いちか、そんなんちゃうやん。無理して誤魔化してるだけやん」
「無理してへんよ」
「とりあえず行くとこないなら俺の店の空き部屋でおったらええ。俺も半分くらいそこで生活してるし狭いけど1人くらい全然養えるし」
「そんなんあかん」
「ほないちかの両手足縛ってでも監禁してでもどこにも行かさへんから」
「治にそんなんできへん」
「いちかが俺の前から消えるんやったらやるしかない。24時間一緒におって絶対逃さんから」
「……本気なん？」
「せやで？でも俺、冗談言えへんの知ってるやろ？」
「なんでそこまでしてくれるん？」
「好きやからやろうな」
「好きでもこんなことまでせぇへんよ普通」
「俺の好きはそういう好きやったってことやろ。一つ違うんはそれを今になって気付いたってこと。でも100%自分の気持ちやねん」