第66章 ❤︎ 初恋は実らない 宮治
いちかの目からまた一粒涙が溢れた。涙を拭うように指で拭き取る。
「これでいちかには俺とおる以外の選択肢がなくなったな」
俺に体を預けるように肩に顔を埋めて、それが返事だと思った。
「けど店の休憩室みたいなもんやから狭い部屋やけどなぁ。けど狭いくらいの方が俺はええな。今までの時間全部埋めるんには丁度ええかも。起きてる時も寝てる時も全部一緒にいよ」
この狭いベッドで抱き合ってるみたいに一ミリも離れないように…。
きっとこの関係に正解はないから、答え合わせをする必要もない。〝ごめんな…〟とあの日俺の前で涙を見せたツムの姿がチラついて鋭い痛みが走る。でもその痛みはいちかと同じ俺もツムを裏切った共犯者である証。明日からも俺は何事もなかったかのような日常を送り、何一つ知らない双子の片割れとして平然を装うだろう。
でもそれでいい。俺は最愛を手に入れたから。自分のプライドをかけてでもいちかの過去も未来も嘘も全部を守り切る覚悟がある。
fin.