第66章 ❤︎ 初恋は実らない 宮治
柔らかくて温かい素肌、怯えるように見つめる潤んだ瞳を隠すような長いまつ毛、ツムが可愛いと言ってた奥二重。誰が抱いたのか分からないその体でさえ、俺には綺麗に見えた。微かに震える指先を捕まえて自分の手を重ねて指を絡ませる。
「なんで治が泣くん?」
「あー、ごめん。なんでやろ…。自分でもよう分からん。こうやって抱くこともほんまに正解なんやろかって思うけど、ここでいちかを手放してしまうと二度と俺の前に現れてくれんような気がして。ツムを裏切ることよりもいちかを失うことの方が俺は怖いから」
だから…そう言いかけた言葉を飲み込んで震える言葉をどうにか紡ぐ。
「もう今はなんも考えんとこや…。な?」
短い口付けはこれ以上傷つけ合わないための合図。どんな言葉を選んでも2人の正解にはきっと辿り着かない。それが分かっているから今を繋ぎ止めることだけが俺にとっては全てだった。
いちかを覆う布を一枚ずつ剥ぎ取って初めて見る素肌には優しく唇で触れる。片手で収まりそうなくらいの胸の膨らみも自分の体温よりも冷たく感じるから丁寧に舌を這わせる。
「……っ」
チラリと視線を上げるときゅっと噤んだ唇が薄く色づく。
「声我慢せんといてや」
「…でも…」
「俺といちかしかおらんから。なんも気にせんでええ」
胸の突起に唾液を絡めてわざとリップ音をつけて羞恥心を煽る。愛撫に合わせるように体が跳ね呼吸の合間に微かに漏らし始めた吐息を聞き逃さないように自分の息を殺す。理性というブレーキが少しずつ効かなくなっていく感覚を自分でも感じながらもっと深い欲に手を伸ばす。口先で胸の愛撫を続けながらショーツを下ろして人差し指と中指で割れ目をなぞる。あったかい粘液が絡んで指を迎い入れる。いちかは恥ずかしそうに目を閉じる仕草がたまらなく可愛くて愛おしくなる。一度体勢を直して額に口付ける。
「これで濡れてなかったら俺自信なくしてたわ」
俺の言葉が意外だったのか、いちかは目を丸くさせる。冗談の一つでも言えば少しくらいはこの重い空気に抗えるかなって。
「私、こんな時なのに、体ばっか正直でほんとに嫌になる」
「なんで?正直ってことは一ミリくらいは俺としたいって思ってくれてるんやろ?」
「でもこんなん最低やん」
「俺も同罪。でももう戻れへんのやから行くとこまで行くで」
