第66章 ❤︎ 初恋は実らない 宮治
「いちかの相手が俺やったらちゃう未来になっとったんか…」
「それはそれでキツい話やな…。けどいちかを想ってたサムにとっても同じか、いやそれ以上かもしれんな」
「俺やってそれなりにダメージ食らってるわアホ」
「すまんかったな、こんな情けない報告になって」
「ほんまにな…」
「10年間やからな。さすがに一週間とかじゃ立ち直れへんけどやっとサムに報告できるまでにはなったから。たまには酒付き合えや」
「……酒弱いくせに」
「弱いからええんや。アルコールが気を紛らわせてくれるから」
「重症やな」
「ほんまにな…。今、呼吸して立ってられんのが不思議やわ」
チャラいくせにアホみたいに一途で、いちかの態度一つで一喜一憂して誰よりも大切にしてて、俺はいちかの隣でおれるツムのことが誰よりも羨ましかった。
こんな結末、誰も望んでなんかなかった。自分が抱いていて純粋な想いすら穢されていくみたいで体とその奥を蝕んでいく。まっさらなとこに落ちた一滴の黒い感情は滲んで広がり視界を汚した。
あのままいちかに会うこともなければこんなことになってなかった。
こうなるんはもう決まってたことなんかも知れんな。