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(R18) kiss hug ❤︎ HQ裏夢

第66章 ❤︎ 初恋は実らない 宮治


これが嘘やったらどんなにええか。世界一幸せそうな阿保面下げて〝結婚すんねん〟って惚気てくれた方が自分の気持ちに嘘をついてでも“おめでとう”って笑えてた。いずれはそうなるやろうと何度も言い聞かせてきた自分がアホらしく思える。

「なぁ…」
「なんや…」
「俺の気持ち全部知っててんやろ?俺の方がツムより先にいちかのこと想ってたんも全部…」
「やからなんやねん…、もう終わってしもたんや」
「いちかがツム選んだ時、俺は全部託お前に託す気で“良かったな”って言うたんやぞ」
「お前やってそのつもりやったわ…。いちか見つめてるツムの視線が他とちゃうことくらい気付いてたわ、双子やぞ」
「やったらなんで死ぬ気で奪い返さへんねん」
「遅かってん。俺やってドラマみたいに行くなって抱きしめて泣いて縋ったり相手んとこいってその男ぶん殴っていちかの気持ちが戻ってくんなら選手生命捨ててでも奪い返しに行ってたかもしれん」
「ほんまにもう無理なんか…」
「心変わりだけはどうすることもできんかった。ごめんさないって泣かれて、頭下げられて、怒りも憎しみも超えてただ可哀想な人間やと思ってもしたら愛情とかやなくて同情しかなかった」

語尾はかすかに震えていた。目の前の男が本気で弱ってるところなんてここ何年も見てない。絶望の二文字を前に情けなく項垂れている。

「俺はあいつにしてやれることがないんやなって気付いたら、終わりだけが待ってたわ」
「ほな…」

誰にぶつけていいのかすら分からない行き場のない感情が押し寄せては溢れて、口に出すことのできなかった仮の人生に想いを重ねる。
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