第64章 ❤︎ 木兎光太郎はスローセックスを覚えた
「辛くないの?」
「大丈夫…。なんか意外と落ち着いてるし。今夜はこのまま眠ろう?」
「うん」
「おやすみ、いちか」
「おやすみ、光太郎」
俺をじっと見つめた後、ゆっくりと瞼を閉じる。相変わらず可愛い寝顔。けどこんなにまつ毛が長かったんだとかホクロがあったんだとか今になって気づかされる。
ベッドに入ったらとにかくスイッチが入って早くやりたい、挿れたいって欲が強くすぎた気がする。そりゃ今だってやりたいって気持ちはめちゃくちゃあるんだけど、でも俺に足りないのはこういう時間なんだよな。
「大切にするって言ったのに大切にできてなくてごめんな…?」
「ん…?何か……、言った?」
「ごめん、寝てたのにな。なんでもないから寝てて」
「うん…」
体を預けるように擦り寄せてきたいちかを抱き締めた。今夜は眠れないかもしれないってことも覚悟してたのに普段使わない頭であれこれ考えていたせいか知らないうちに俺も眠ってしまっていた。
んで翌日の夜もこんな感じ。理性と欲望の狭間でなんとか己を保つ。けど三日目からはいちかの方からキスを求めてきたり、少しずつ変化を感じていた。バキバキ勃ってるのをどうにもできなくて正直俺は相当辛かったけど、一日目より確実に触れ合っている時間が長くなっていた。
俺の幻覚なのかもしれないけど、ベッドの中で戯れ合ってる何処となくしてる時みたいに濡れた瞳で見つめられ、キスだけで応えて時間が経てば眠る。こんな風にただ触れ合うだけまま眠る夜が5日くらい続いた。