第64章 ❤︎ 木兎光太郎はスローセックスを覚えた
昼下がりの喫茶店はそれなりに店内も賑わっていた。誰にも相談できない悩みは周囲の雑音がうまくかき消してくれる。
「ってことがあって俺はついにこの世の終わりを迎えた訳…。まだ結婚もしてねぇのに同棲一年目で俺はいちかに嫌われてしまった」
「なるほど。だから地球滅亡レベルのメンタル崩壊なんですね」
「そう…」
「でも一ついいですか?」
「何……?」
「あんたが全部悪いです」
「え?なんで!?」
「いちかさんの体力考慮しないでほぼ無理矢理抱いてる木兎さんが悪いでしょ、どう考えたって」
「だっていちかに触れたらついムラっとするんだもん」
「それは俺も男だから分かります。でも限度はあります」
「いっつもさー、いちかも気持ち良さそうにしてたし毎回ちゃんとイッてくれてたし」
「演技かもしれないですよ?」
「え……っ」
「演技しようと思えばいくらでもできますからね」
「嘘だろ。俺…、独りよがりだったのかも…」
「まぁそれはいちかさんしか分かり得ないことですけど、そこまで切羽詰まってるんなら究極のやつ、教えましょうか?」
「何!?究極のやつってなんかすげぇの!?秘孔でも突くの?」
「違います。何もしないんです」
「何もしないって?」
「だから、何もせずただ待つんです」
「そっち系、無理。それができりゃこんなことになってねぇもん」
「じゃあいちかさんのことは諦めてください」
「それも無理」
「二択です。やるかやらないか…。でもやらなかった場合の結果、二人の未来はもう分かってますよね?」
口元は笑っていても完全に目が笑ってない赤葦の表情が怖すぎる。
「………やる…」
しかないんだよな…。やるって言っても何もしない。結局俺が我慢する以外に方法はないんだよな。今にも涙がちょちょ切れそうな俺に追い討ちをかけるように領収書をすっと差し出す。
「ではこれは相談料ということで…」
コーヒーの前にしれっとホットサンドも食ってたし。どこまで鬼なんだよ、あかーし!!