第53章 ❤︎ 俺のものだから返してもらうだけ 及川徹
視界に入る真っ白な衣装。誰かのものになる花嫁を犯す禁忌。でも俺にとってはそんなことはどうだってよかった。俺への気持ちを残していてくれたいちか に応えたい、そして奪い去りたい、それだけだ。
開いた胸元へ唇を滑らせて谷間に顔を埋めていちか の吐息に酔いしれる。ガチガチに締め付けているコルセットを外すのは容易ではなかったけど蕩け始めたいちか の表情に理性を保つのはこれ以上は無理だった。
「…徹」
「……何」
「もう一回、キスして…」
いちか の唇に吸い寄せられるように重ねると二人分の重みを支えるソファーが軋む。深く交わるリップ音と合間の重なる呼吸。自由のきく右手はチュール素材の生地をかき分けて太ももをなぞり薄い布の先に触れた。
「ふ、ぁ…っ」
しっとりと濡れたそこは熱くて蕩けている。俺を見つめる瞳も情欲に濡れて薄い唇もピンク色に染まっていた。
「ねぇ、いちか ……」
切なく息を吐くように名前を呼ぶ。不思議なくらいに冷静だった。禁忌を犯すと分かっていてももう覚悟はできてた。