第51章 ❤︎ 彼氏の性癖が歪んでいる件 黒尾鉄朗
目の前には薄いピンク色のマイクロビキニ。それがプレゼントの中身だ。
「いちかに似合うと思って」
笑顔でそう話す鉄朗からは悪気は全く感じられない 。あるとすればそれは下心だ。
「渡す相手間違ってない?」
ふるふると怒りやら情けなさが込み上げる私。アニメなら確実に私の頭に怒りマークがついていると思う。
「間違ってねぇよ?正真正銘俺の恋人である柳瀬いちかちゃんへのプレゼントだけど?」
俺なんもやましくねぇよ?純粋な気持ちだよ?と言わんばかりの表情。
「さっきまでの私のほろ酔いいい気分な雰囲気とお星さまへの乙女の祈りが台無しなんだけど」
「いやいや、この袋の中には乙女の祈りも願いも全て詰まってるでしょ?」
「詰まってないよね、それに乙女はこんなマニアックな水着は絶対に着ないから」
「だっていちか、この前全身脱毛でパイパ…」
鉄朗の言葉にとっさに口を塞いだ。確かにした。全身脱毛したけれども。テラスとは言えどもこんな外で口にするのは許されない。
「それ以上言わないで。……怒るよ?」
「………ふいまへん 」
「もう言わない?」
「………ふぁい 」
「分かればよろしい。じゃあこれ新品だけどゴミ箱行きね」
「え……」
「だってこんなの誰が着るのよ」
「いちかちゃん」
お隣さんにも聞こえるくらいの盛大なため息をついてもう一度聞く。
「誰が着るって?」
「だからいちかチャン」
「冗談は聞き飽きた」
「真面目です」
「こんなの誰が得するの…?」
「俺得です」
「身につける私に得はないんかい!?」
「いや…、それを着用したいちかチャンを穴が開くほど見つけて愛でようと思って」
「私、鉄朗の性癖に付き合いたくない」
「だから俺得なんだって」
「しかもさ…、いい歳したおっさんがこれ買うの恥ずかしくなかったの?変な目で見られなかった?」
私はその紐のようなマイクロビキニをまるで汚物に触れるように摘まみあげた。
「30を超えたおっさんには結構な羞恥プレイでした」
「だよね。鉄朗が変態なのは知ってます。けどこれは彼女の私でもさすがにドン引き……」
「……え…?」
「…ドン引き」
「………」
30も過ぎたおっさんが頬を膨らませたって可愛くない!!沈黙を続ける私の態度に少しは反省したかと思ったのに全くそんなことはなかった。
