第48章 ❤︎ 処女相手にあまぁいセックスをするイケオジ岩ちゃん
「泣くんじゃねぇよ」
「泣き上戸なんです。…だってこんな事、今まで誰にも言ってなかったから」
「俺でよかったわ。俺以外だったらこのまま持ち帰られてるとこだったぞ?」
「岩泉さんだからです。岩泉さんじゃなきゃ嫌です」
「なんでだよ」
「怒ったら怖いけど私にいつも優しくしてくれるから。先輩が初めての相手なら例え一生彼氏ができなくても構いません。その思い出だけを胸に仕舞って生きていきます」
「重いんだよ…」
「だってほんとのことなんだもん」
涙腺全部解放しちゃったのかってくらいに涙が次々に溢れてきては止まらない。子供みたいに泣いちゃうなんて最後に飲んだアルコール度数9%の酎ハイのせいだ絶対。残り91%が水分のくせにやるじゃんなんて馬鹿みたいな事考えてたらおしぼりが視界を塞いで独特の消毒液の香りの後、きゅっと鼻を摘間れる。
「泣くな。……もう帰るぞ。近くまで送ってくから」
短いため息が絶望的に聞こえて冷たく放たれた言葉に胸が痛む。
「もう少し」
「だめだ」
引き止めようにも伝票を持つとさっさと席を立って背を向ける。嫌われてしまったかもしれないとか引かれちゃったかなって考えてすぐに“ごめんなさい”って言って後悔してるのに、まだ諦めきれなくて急いで荷物をまとめて後について行った。
外は夜の冷たい空気が肌を刺す。さっきまでは一緒に並んで歩いてくれたのに振り返ることもなく歩き始めた。周りから見れば他人に映るくらいの距離。先輩の歩幅に合わせられくて途中からは早歩きでついていくのが精一杯。
吐く息が白くて目の前にふわっと浮かんでは消えていく。岩泉さんの背中まで消えちゃわないように涙の匂いのする鼻を啜って“待って”と呟いた唇は震えていた。