第45章 ❤︎ もしも岩ちゃんがスイミングインストラクターだったら…
それからはあっという間だった。ランチをしたり色んなお店を回って話したり…。本当のデートみたいでもっと一緒にいたいと思えば思うほど暗くなっていく空が恨めしかった。
待ち合わせの場所に戻った時、ああこれで今日は終わっちゃうんだなって切なさがこみ上げてくる。
「今日は一さんの意外な一面も見れて楽しかったです」
「俺も…。チケットも無駄にならなかったしいちかがいてくれて良かったわ」
そんなこと言われたら離れたくなくなっちゃう…って思った瞬間にうっかりと本音が零れていた。
「まだ帰りたくないな…」
「どうせ近くまで送ってくつもりだったし遠回りして帰るか?」
「いいんですか?」
「顔色も悪くは見えないけど体調は?」
「全然平気です。今からフルマラソンしろって言われたらそれは無理ですけど」
「俺も無理だわ。…けど元気そうだな?」
「大丈夫です!無問題です!」
「んじゃ、ほら、手…」
あったかい。一さんの表情も掌も…。だめだ、一さんの優しさが胸を締め付けて苦しくて気を抜いたら泣いちゃいそうになる。
「……っ」
いろんな感情が混み上がってきては上手く言葉にできなくて、急に喋らなくなった私を心配そうに見つめる。