第45章 ❤︎ もしも岩ちゃんがスイミングインストラクターだったら…

「どした？なにかあったのか？」
「えーと、…まぁ、色々と」
「なんだよ、話せよ」
「でも大したことじゃないです」
「気になんだろ？」
「……最近、元彼からよく連絡がきて…、あ、でも元彼っていっても一年も前に終わった人ですけど」
「やり直そうって？」
「そう、ですね…。でもその人たまに暴力とか振るうような人だったし、別れ間際にも色々あっていい別れ方できなかった人なんですよね。復縁する気なんて全然ないけど、家も知られてる分怖いなって…ってこんな話されても困りますよね。ごめんなさい」
「いや、話してくれてよかったわ。んなことがあったなんて知らなかったし、近くじゃなくて家までは送ってくから」
「いいんですか？」
「いちかだって不安だろ？さっきまであんなに笑ってたのに急に泣きそうな顔されたら放っておけねぇしそれに…」

突然、視界が真っ暗になって一さんの匂いに包まれた。何が起こったんだろうって思ったけど、直に聞こえてくる心臓の音と温かな感触に今抱きしめられているって理解した。

「俺の方が離したくねぇ…」
「一さん…？」
「今確信したわ。俺、いちかが好きだわ」

“好き”のフレーズが更に私の思考を鈍化させる。私も…ってその一言だけなのに胸につかえてしまって耳に伝わる言葉が胸を熱くさせていく。

「うちに来た時からずっと気になっててまだ早いって思ってたんだどそんな男にいちかを傷つけられたくねぇし、不安なら側にいてやりたい」
「…側にいてほしいです。私、嬉しすぎてなんて言っていいのか分かんない」
「お前、俺のこと好きだろ？」
「はい、大好きです」
「だったらそれだけでいい…」
「あの、一さんの好きな人って…、私のことでいいんですよね？さっき好きって…」
「いちか以外の誰に告白したと思ってんだよ…ったくお前は、やっぱ面白いわ」
「どうしよう…。ねぇ、これ夢…」
「夢じゃねぇから…。夢でもねぇし嘘でもねぇよ」

一さんの背中に手を回して抱き締め返した。こんなに大きいんだって初めて感じるのさえ嬉しい。