第45章 ❤︎ もしも岩ちゃんがスイミングインストラクターだったら…
デートの前日ま元彼からの連絡は届いていた。メッセージでは“謝りたい”とか“改心したから”の言葉は並んでるけど信用できるはずもない。この執拗さに家を知られてるだけにいつかはここまで来るんじゃないかって不安すら感じていた。
それでも一さんとの約束は心の支えにもなっていて約束の場所で一さんの顔を見た瞬間、思わず泣いてしまいそうになった。
「おはようございます」
「悪い。待たせたか?まさか朝から待ってたんじゃないだろうな?」
「あれは冗談ですって。つい10分くらい前にきたばっかりです」
「そっか。なんか二、三日会わなかっただけなのに随分長い時間会ってなかったみたいだな。今日は体調は大丈夫?」
「はい。ちゃんと薬も飲んでるので」
「…薬飲むくらい酷いのか?体調悪いならまた別の日でもいいんだけど」
余計なこと言っちゃったかなって一瞬思った。鎮痛剤を飲むのなんていつものことだから気にならなかったけど、こんなこと言ったら余計心配しちゃうよね…。
「このくらい全然平気です。もし今日来れなかったら私一生後悔しちゃうもん」
「映画くらいで何言ってんだよ。んなもんいつでも付き合ってやんのに」
「それでも今日はどうしても会いたかったんです」
私の言葉に驚いたような表情を見せるから、やば…と思って慌てて話を切り替える。
「えと、それで何観ます?」
「俺は何でもいいよ。いちかの観たいのでいい」
「実はあるんですけどでも…、それゾンビがたくさん出てくるんですよね」
「ゾンビかよ…」
「一人で観る勇気がなくて…」
「中は暗いぞ?」
「でも恋愛要素もあってハッピーエンドらしいんです。だから余計気になっちゃってて」
「…いちかがそこまで言うならそれでいい。別に苦手じゃないし」
「じゃあ…、恐かったら手とか握ってもいいですか?」
「は?」
「嘘ですごめんなさい。冗談です」
「別にいいよ」
「え?」
「ほら、手出せ」
「今からですか?」
「別にいつからでもいいんじゃねぇの?」
「そりゃそうですけど…」
「繋がなねぇんなら置いてくぞ」
「是非ともお願いしますっ!」
冗談で言ったつもりだったんだけど、一さんの大きな手が私の右手を捕まえて包みように握る。