第45章 ❤︎ もしも岩ちゃんがスイミングインストラクターだったら…
1時間ほど一緒に過ごしてほろ酔い気分で店を出た。頼りない古びた街頭の灯りも今夜はずっと明るく見える。
「今日は楽しかったです。しかも奢ってもらっちゃってすいません」
「さすがに学生に払わせるわけにはいかねぇだろ?」
「すみません。本当に…」
「でも一応内緒にな?」
「はい!そこはもう墓場まで持っていく覚悟で…」
「だから表現がいちいち大袈裟なんだよ」
「でも一さんと一緒だったからいつもよりもずっと美味しかったです」
「ならよかったわ」
「次が楽しみです」
「けどちゃんと運動もしろよ?明日もプール来んだろ?」
「はい、その予定です。明日は午前中だけ講義なので午後から」
「分かった。じゃあいちかの練習メニュー考えといてやるから待ってんぞ」
「はい!全力で頑張ります!」
「今日は近くまで送ってくから」
「ほんとですか!?ありがとうございます!!」
一さんと肩を並べて帰れるなんて夢みたいだった。もちろん待ってる、なんて言葉は完全に営業トークなんだろうけどまた会えると思うとそれだけで嬉しい。
話してみたらすごく優しいしお年寄りには好かれてるしはにかむ笑顔は天使に見えるし横顔をちらっと見るだけでもドキドキしてる。
だからはっきり言う。私に与えられた選択肢は“一さんを好きになる”この一択しかない。